「備(そな)え有れば患(うれ)い無し」と訓読みします。日頃から気をつけて準備しておけば、心配いらないという意味です。「患」は「うれえる」が最初の意味で、派生した意味として「わずらう」に使われているようです。
「有備無患」は『書経』の説命(えつめい)というところに出ている四字熟語です。
殷(B.C.1700~B.C.1100)の第22代・武丁(B.C.1400?)は、すぐれた補佐役を得た夢を見て、国中を捜させ、傅説(ふえつ)を見つけ宰相に取り立てました。その傅説が王に進言した言葉、
「・・・・。国が治まるか乱れるかのもとは、官僚に人を得るかどうかによります。・・・・・・善であるかどうかよくよく考えて行動し、その行動は時宜を得たものにすることです。・・・・すべての事を確実に行っていけば、そこで初めて物への備えが出来てきます。物への備えができれば、心配事が無くなります。・・・・・・・・。」
の最後のところに「惟(こ)れ事を事とすれば、乃(すなは)ち其れ備え有り、備え有れば患いなし」として「有備無患」が出ています。
四字熟語の多くは二千年以上も前の中国古典に求められます。なるほどと思わせるものが多数有ります。 「有備無患」は為政者に、今で言うならば政治を取り仕切っている人達への進言です。