【好事(コウジ)を行(おこな)うを知(し)りて、前程(ゼンテイ)を問(と)う勿(な)かれ。】と読みまして、善いことを行うことの大切さを心得て、将来の利得を期待してはならない、という意味です。
出典は五代周の馮道(フウドウ)の『天道』という詩です。
窮達皆有命、
窮達(キュウタツ)皆(みな)命(メイ)有(あ)り、
困窮と栄達といった運命は、天命によってきまる(のであって)
何勞發嘆聲。
何(なん)ぞ嘆聲(タンセイ)を發(ㇵッ)するを勞(ロウ)せん。
いちいちため息をついて悩む必要はない。
但知行好事、
但(た)だ好事を行(おこな)ふを知りて、
ただひたすらよいことを行うことを知るだけでよい、
莫要問前程。
前程を問ふを要(もと)むること莫(な)かれ。
将来のことについて、訊ねることはするな。
冬去氷須拌、
冬去らば氷須(すべか)らく拌(と)く、
冬が過ぎれば、氷は溶けるし。
春來草自生。
春來たれば草自ら生ぜん。
春が来れば、草は芽生える。
請君觀此理、
君に請(こ)ふ此(こ)の理(ことわり)を觀(み)よ、
お願いだ、この天の道理を悟ってほしい。
天道甚分明。
天道甚(はなは)だ分明なり。
天道は、甚だはっきりとしているのだ。