【人の世を渉(わた)るは行旅(コウリョ)の如(ごと)く然(しか)り。】と読みまして、人が世を渡るのは、旅行をするようなものである、という意味です。
出典は『言志後録』70条です。
人渉世如行旅然
人の世を渉るは行旅の如く然り
人が世を渡るのは、旅行をするようなものである
途有険夷、日有晴雨、畢竟不得避。
途(ト)に険夷(ケンイ)有り、日に晴雨(セイウ)有りて、畢竟(ヒッキョウ)避(さ)くるを得ず。
道中には険阻な所もあり、平坦な所もあり、また晴れの日もあり、雨もあって、
これらは避けることができない。
只宜随処随時相緩急。
只(た)だ宜(よろ)しく處(ところ)に隨い時に隨い相(あい)緩急(カンキュウ)すべし。
ただその所、その時に従って、旅程を緩めたり急いだりするがよい。
勿欲速以取災。
速(すみやか)ならんことを欲して以て災(わざわい)を取ること勿(なか)れ。
あまり急いで災いを受けてはいけない。
勿猶予以後期。
猶予(ユウヨ)して以て期(キ)に後(おく)るること勿れ。
またゆっくりし過ぎて期日に遅れるようでもいけない。
是處旅之道、即渉世之道也。
是(こ)れ旅に処するの道にして、即ち世を渉るの道なり。
これらが旅をする心得であり、同時に世を渡る道でもある。