【衆口(シュウコウ) 金を鑠(と)かす】と訓読みされます。
多くの人の言葉、噂(うわさ)、評判などが堅い金をもとかし、多くの人の陰口やそしりの恐ろしさを譬えた四字熟語です。
【衆】は、甲骨文字では、囗と三人の人を組み合わせた会意文字です。囗は、都市を囲む
城壁の形です。都市の中に多くの人がいることを示し、「多くの人、おおい」の意味となります。
【口】は、「くち」を表します。
【衆口:シュウコウ】 は、 多くの人がいう言葉を表します。
【鑠】は、「金+樂(音符号)」の形声文字です。意味は「と・かす」です。
「矍鑠(カクシャク)たる翁」は元気なご老人、をいいます。
「樂」を共通に持つ字としまして「薬(藥):ヤク。くすり」、「擽:リャク・レキ。くすぐ・る」、
「瓦礫:ガレキ」、「軋轢:アツレキ」などがあります。
【金】は、鋳込んだ金属を表す象形文字です。
【鑠金:シャクキン】は、金属を溶かすという意味です。
【衆口鑠金】は『戦国策』、『淮南子:エナンジ』、『史記』などにでています。その中で
『史記』魯仲連(ロチュウレン)・鄒陽(スウヨウ)列伝には、鄒陽が讒言(ザンゲン)に合い、投獄されたとき獄中から梁(魏)の孝王にあてて上書した文書の中に【衆口鑠金】がでています。
昔者(むかし)、魯(ロ)、季孫(キソン)の説を聴きて、孔子を逐(お)ひ、
むかし、魯は季孫(キソン)氏の説を聞き入れて、孔子を放逐(ホウチク)し
宋、子罕(シカン)の計を信じて、墨翟(ボクテキ)を囚(とりこ)にす。
宋は、子罕の計(はかりごと)を信じて墨翟を捕えました。
夫(そ)れ孔墨(コウボク)の辯(ベン)を以てすら、
孔子、墨翟ほどの弁舌の士であっても
自ら讒諛(ザンユ)に免(まぬが)るる能(あた)はずして、二国以て危し。
讒言や阿諛(へつらい)から免れることはできず、魯・宋の二国は危うかったのです。
何となれば則ち衆口金を鑠し、積毀骨を銷すればなり。
何故ならば、衆人の取りとめもない悪言は金をも鑠(と)かし、積もり積もった讒言は
骨をも消してしまうからです。
この書面が梁の孝王に奏上されると、孝王は人をやって鄒陽を獄から出し、ついに上客としました。
東日本大震災から二年が立ちました。原発事故も絡んだ福島にとって、未だに消えない風評被害は
【衆口鑠金】以外の何物でもありません。