【木(き)繩(ジョウ)を受(う)くれば則(すなわ)ち直(なお)く、金(キン)礪(レイ)に就(つ)けば則ち利(するど)し】と読みまして、木は墨縄(すみなわ)を受ければまっすぐに作り上げられ、なまくらな刃物も、砥石で磨き上げれば切れあじ鋭くなる、という意味です。
すべてその本性がよくないものも、人の手をかけて矯正して行けば、よりよいものにできるという喩えです。
人もまた、学問を修めることにより、優れた立派な人物になれることを言っています。
学問の必要性を強く説いている『荀子』勧学篇の冒頭に見える言葉です。
君子曰、學不可以已。
君子曰く、學は以て已(や)むべからず。
学問は、中途で止めてもかまわないというようなものでは絶対にない。
青取之於藍而青於藍、
青は之(これ)を藍(アイ)より取りて藍より青く
青色は藍の草から取り出すのではあるが、しかも藍色よりもいっそう青く
冰水爲之而寒於水。
冰(こおり)は水之を爲(な)して水よりも寒(つめた)し。
氷は水からできるのであるが、水よりつめたいのだ。
木直中繩、
木(き)の直(チョク)なること繩(ジョウ)に中(あた)るも、
木のまっすぐな事は、墨縄に当てて正に的中するほどの直木でも。
輮以爲輪、其曲中規、
輮(たわ)めて以て輪(リン)と爲せば、其の曲(キョク)なること規(キ)に中(あた)り、
外部から力を加えて曲げて車の輪に仕立てると、その丸い曲線は正しくコンパスに的中し
雖有槁暴、不復挺者、
槁暴(コウバク)有りと雖(いえど)も、復(ふたた)び挺(テイ)せざるは、
完全にかわき切ってしまってからも、決して元の形のまっすぐな姿に戻らないのは
輮使之然也。
輮(ジュウ)之(これ)をして然(しか)らしむるなり。
曲げるという外部からの力が木をそうさせたのである
故木受繩則直、
故(ゆえ)に木(き)繩(ジョウ)を受(う)くれば則(すなわ)ち直(なお)く、
だから、木は墨縄を受ければまっすぐに作り上げられ
金就礪則利、
金(キン)礪(レイ)に就(つ)けば則ち利(するど)く、
金物は砥石で磨き上げれば鋭利になり
君子博學、而日參省乎己、
君子は博(ひろ)く學びて、日(ひ)に己(おのれ)に參省(サンセイ)すれば、
優れた人になろう努力する人は、博く學を身につけ、同時に日々
自分の行為の動機と結果、目標と方法を見比べ照らし合わせることにより
則智明而行無過矣。
則ち智は明(あきら)かにして行(おこな)ひ過(あやま)ち無し。
自然に智慧もはっきりとついて来るし、行動にも過ちが無くなるであろう。