【空谷(クウコク)の足音(ソクオン)】と読みまして、寂しく独居しているところへ、予期せぬ訪問客がある喜びです。予期しない喜び、また、非常に珍しいことの喩でもあります。
出典は『荘子』徐無鬼篇です。
夫逃虚空逃者、
夫(か)の虚空(キョクウ)に逃(のが)るる者は
いったい、世間を逃れて人里離れて荒れ果てた土地に行き、
黎藋柱乎鼪鼬之逕。
黎藋(レイチョウ:あかざ)、鼪鼬(セイチュウ)の逕(みち)に柱(ふさ)がる。
黎のような雑草が、鼪(むささび)や鼬(いたち)の通る細い道まで
ふさいでしまうほど、
踉位其空、
其の空に踉位(リュウイ:長い間の意)すれば、
長い間、谷間に暮らしていると、
聞人足音跫然而喜矣。
人の足音、跫然(キョウゼン)たるを聞きて喜ぶ。
人の足音がかさこそと聞えただけで、嬉しくなるものです。