【衣(イ)は以(もっ)て寒露(カンロ)を覆(おお)うに取(と)る】と読みまして、衣服は冷たい露を防ぎしのぐだけでよい。無用な贅沢はしないこと、という意味です。
出典は『顏氏家訓』止足篇第十三です。
天地鬼神之道、皆惡滿盈。
天地鬼神の道、皆滿盈(マンエイ)を惡(にく)む。
天地鬼神の道は、皆満ち足りるのを嫌う。
謙虚冲損、可以免害。
謙虚(ケンキョ)冲損(チュウソン)、以(もっ)て害を免(まぬが)るべし。
謙虚で控えめにすれば、禍いを受けることはない。
人生、衣取以覆寒露、
人生、衣は以(もっ)て寒露(カンロ)を覆(おお)うに取り、
人間の生活で、衣服は寒気雨露をしのぎ、
食取以塞饑乏爾。
食は以て饑乏(キボウ)を塞(ふさ)ぐに取る爾(の)み。
食物は飢えを満たせたら、それでよい。
形骸之内、尚不得奢蘼、
形骸(ケイガイ)の内(うち)も、尚(な)ほ奢蘼(シャビ)を得ず、
自分の身体でさえ、なお贅沢は必要ではないのに、
己身之外、而欲窮驕泰耶。
己(おのれ)が身の外にして、驕泰(キョウタイ)を窮めんと欲せんや。
自分の身体でさえ、贅沢は必要ないのに、
なんで(身体にかかわらないことで)、奢侈を窮める必要があろうか。