【奇貨、居(お)くべし】と訓読みされます。
掘り出し物だから大事にして手元に取っておこうという意味です。チャンスは逃しちゃいけない、という意味にも使われます。
【奇貨】は、珍しい価値のあるものです。
【奇貨可居】は『史記』呂布韋(リョフイ)列伝にある故事です。
戦国時代の末期、大商人の呂布韋は、趙の国の都:邯鄲(カンタン)に人質となっていた、秦の公子・子楚(シソ)をたまたま目にして、【これ奇貨なり居くべし】、と言いました。
子楚は秦の諸庶(ショショ)孽孫(ゲッソン)にて,諸侯に質たり。
子楚は、秦の多くの妾腹(ショウフク)の子の一人で、人質に出されていました。
車乘、進用、饒(ゆた)かならず、居處(キョショ)に困(くる)しみ、意を得ず。
車馬や金銭が十分でなく、日常生活も苦しく、意に任せなかった。
呂不韋、邯鄲に賈(こ)し、見て之を憐れみて、曰く
呂不韋が商用で邯鄲に来た時、たまたま子楚を見かけ、憐れんで言いました、
【此の奇貨居く可し】と。
【これは掘り出し物だ。買い入れて貯えておこう】。
ここから秦の始皇帝に至る、或る意味スキャンダラスなドラマが始まります。
表向き、子楚は始皇帝の父親となっていますが、実は呂布韋の子供なんだそうです。
呂布韋(リョフイ)列伝にハッキリと書かれています。
宮城谷昌光さんに、『奇貨居くべし』の著作があります。呂不韋を主人公にした、全部で5巻からなる小説です。
趙の藺相如(リンショウジョ)、齊の孟嘗君(モウショウクン)、楚の春申君(シュンシンクン)、荀子(ジュンシ)等々、中国戦国末期を彩った多才な人物が登場してます。