互いに心に逆らうことのない意気投合した友人を表す言葉です。
【莫逆】は『バク(漢音)ゲキ(漢音)』と読むのが正しいのですが、通常『バク(漢音)ギャク(呉音)』と読んでいます。
【莫】は、草原に日が沈む状態を表した会意文字で、「日ぐれ」を表す字として作られました。
【莫】がもっぱら「・・・することなし」と否定詞として使われたことから「日ぐれ」を表す字には
【莫+日】としての【暮】が作られました。
【逆】は、【屰+辶】からできた会意文字です。【屰:ギャク】は人のさかさまの形です。
【辶】を加えて『さからう』の意味を表します。
【之】は、「足あと」を表す象形文字です。「ゆ・く」、「いたる」の意味が本来です。「~の」として
使われるのは「仮借:カシャ」という用法です。
【友】は、【又(手)+又(手)】からできた会意文字です。【又】は右手の象形です。
手に手を取り合う「とも」の意味を表します。
『荘子』大宗師(ダイソウシ)篇に【莫逆於心:心に逆らう莫(な)く】の形で、でています。
子祀(シシ)・子輿(シヨ)・子犁(シリ)・子来(シライ)、四人相(あい)与(とも)に語りて曰く、
四人が話し合った
孰(たれ)か能(よ)く無を以て首と為し、生を以て脊(セキ)と為し、死を以て尻(しり)と為す。
生前を首にたとえ、現世を背骨にたとえ、死後を尻と考えられるかな。
孰か死生存亡の一体なるを知る者ぞ。
生前、現世、死後が一つのものであると知っているかな。
吾之と友たらん、と。
そんな風に考えられるんだったら、仲良くしようぜ。
四人相視て笑い、心に逆らう莫く、遂に相与に友と為る。
四人は顔を見合わせて笑い、意気投合し、やがて親交を結ぶようになりました。
【莫逆之友】の形では『南史』列伝第二十に【莫逆友】としてでています。