【衣(イ)は采(サイ)を重(かさ)ねず】と読みまして、華美な衣服を用いないという意味で、質素な生活をおくることを言います。
出典は『史記』越王勾践世家でです。
春秋時代、越王句践は呉王夫差との戦いに敗れ、屈辱的な講和をして帰国しました。
そこで、身を苦しめ心を痛め、王のそばに胆をおき、
起き伏しのたびにその胆に目をそそぎ、飲食の時にも胆をなめて、
「おまえは会稽の恥を忘れたか」と言うのでした。
身自耕作,
身自ら耕作し,
みずから農作業にいそしみ
夫人自織,
夫人自ら織る,
夫人も機織りに身を入れ
食不加肉,
食は肉を加えず,
食事はただ一菜で
衣不重采,
衣は采を重ねず
着物は彩色あるものは重ねず
折節下賢人,
節を折りて賢人に下る
自分を屈して賢人にへりくだり
厚遇賓客,
賓客(ヒンキャク)を厚く遇し,
内外の賓客を厚くもてなし
振貧弔死,
貧を振(すく)ひて死を弔い,
貧民を救済し、死者を弔問し
與百姓同其勞。
百姓と其の勞を同じくす。
すべての人民と労苦をともにしました。