国家の重臣のことを言います。
【社稷】の【社】は土地の神、【稷】は五穀の神のことです。
古代中国において、国のもっとも重要な守り神であることから変化して朝廷・国家を言うようになりました。
【社稷之臣】となりますと、大きな国に従属する国、また譜代(代々その主家に仕えること)の家臣を言うようになりました。
【論語】季氏篇に、【社稷之臣】がでています。
季氏、将(まさ)に顓臾(センユ)を伐(う)たんとす。
大夫の季孫氏が魯の属領の顓臾を伐とうとした。
冉有(ゼンユウ)・季路 孔子に見(まみ)えて日く、
この時季孫氏に仕えていた冉有と季路(子路)が孔子に面会して、
季氏将に顓臾に事有らんとす。
季孫氏が顓臾を攻撃しようとしております、と報告した。
孔子日わく、求、乃ち爾(なんじ)是れ過(あやま)てること無きか。
孔子は、求や、お前達は何か勘違いをしているのではないか
夫(そ)れ顓臾は昔者(むかし)先王以て東蒙(トウモウ)の主と為し
且つ邦域(ホウイキ)の中に在り。
そもそも顓臾はその昔、先王が東蒙山の山の神を祭る為に封じた国であり、
かつ魯の領土内にある
是れ【社稷の臣】なり。何を以てか伐つことを為さん。
れっきとした魯の臣従国である。なのに何故これを伐とうとするのか、と云った。
《本文はまだ続きます。この文章は、論語の中でも2番目に長い文章です。》
【社稷之臣】に続けて孔子は、冉有と季路に政治に携わる者の心構えのような形で、三つほどコメントを与えています。
① 力を陳(の)べて列に就き、能(あた)わざれば止むと。
力の限りを出し尽してその職につき、それが出来ないなら辞職せよ
② 寡(すく)なきを患えずして均しからざるを患え、貧しきを患えずして安からざるを患うと。
物資の乏しいのを憂えずして、人民への配分の均等でないのを憂え、
人民の生活の貧困を憂えずして、人心の安定しないのを憂えよ。
③ 蕭牆(ショウショウ)の内にあるを恐るるなり。
本当の心配事は、垣根のうち(国内)にある。
これは、政治に携わる人達にとって、今でも通用するのではないでしょうか。今様に書き直しますと
① 実力不足と思ったら潔く身を引け
② 公正な徴税と、公平な配分。治安と秩序の安定と維持を目指せ。
③ 内政を憂慮せよ。
とでもなるのでしょうか。