【水(みず)は則(すなわ)ち舟(ふね)を載(の)せ、水は則ち舟を覆(くつが)えす。】と読みまして、水は舟を載せるが、また舟を転覆させもする、という意味です。
君主は人民によって支えられ、また、人民によって滅ぼされるという意味でもあります。
君主の地位は人民によって支えられているものであるから、政治を公平にして民衆を愛するのが、第一である、と荀子は言っています
出典は『荀子』王制篇です。
【君】を政府に、【庶人】を国民に読み替えてみると、荀子の言っていることが今にも通じる思いがします。
傳曰、
傳に曰く
古伝がいうには
君者、舟也,庶人者、水也。
君なる者は、舟なり、庶人なる者は、水なり。
君主という者は舟であり、庶民という者は水である。
水則載舟,水則覆舟。
水は則ち舟を載せ、水は則ち舟を覆えす。
水は舟を載せるが、また舟を転覆させもする。
此之謂也。
此れ之を謂ふなり。
このことを言ったのである。
故君人者欲安則莫若平政愛民矣
故に人に君たる者は、安(やす)からんと欲せば則ち政を平らかにし民を愛するに若(し)くは莫く、
そこで、人君たる者は、自分が安泰でありたいと思えば政治を公平にして
民衆を愛するのが第一であり
欲榮則莫若隆禮敬士矣
榮えんと欲すれば則ち禮を隆(とうと)びて士を敬うに若く莫く、
繫栄したいと思えば礼という規範を尊重してそれを守る士人を尊敬するのが第一であり、
欲立功名則莫若尚賢使能矣
功名を立てんと欲すれば則ち賢を尚びて能を使うに若くは莫し。
功名を立てたいと思えば賢者を高位につけ有能者を取り立てるのが第一のことである。
是君人者之大節也
是れ人に君たる者の大節なり。
これが人君たる者の大事な守りどころである。