【閒(カン)、髪(ハツ)を容(い)れず】と読みまして、間に髪の毛一本も入れる隙間もないくらい、事態が急で少しも時間のゆとりがないことを表します。
【閒】は、会意文字で、門から月の光がもれ出ずる、すき間の意味です。【間】の正字体です。
【髮】は、形声文字で、「髟:長い髪の毛がなびく意味」+「犮:ハツの音符号」から作られました。
【髪】の正字体です。
出典は『文選』に収録されている枚乘(バイジョウ)の「上書して呉王を諫む」です。
枚乘は、「呉楚七国の乱」の首謀者である呉王濞(ヒ)が起こした謀反を諫めるために書を送りました。
夫以一縷之任係千鈞之重
夫(そ)れ一縷の任を以て、千鈞(センキン)の重きを係(か)け
そもそも一本の糸に千鈞の重さの物をつなぎ
上懸之無極之高
上(かみ)之(これ)を無極の高きに懸(か)け、
上(うえ)を無限の高さにかけて
下垂之不測之淵
下(しも)之を不測の淵に垂(た)るれば
下(した)を底の知れない深い淵につるすとすれば、
雖甚愚之人
甚愚(ジング)の人と雖(いへど)も、
甚だ愚かな人であっても、
猶知哀其將絶也
猶(な)ほ其の將(まさ)に絶えんとするを哀しむを知るなり。
皆その糸が今にも断ち切れそうなのを恐れるはずです。
係絶於天不可復結
係(いと)天に絶ゆれば、復(ま)た結ぶ可(べ)からず。
糸が空中で切れたら、二度と結ぶことは出来ないのです。
墜入深淵難以復出
墜(お)ちて深淵(シンエン)に入れば、以て復た出(い)で難(がた)し。
深い淵の中に落ちてしまったなら、二度と出ることは難しいことです。
其出不出
其の出づると出でざると、
それが出るか、出ないかは、
間不容髮
間 髪を容(い)れず。
一本の髪の毛を入れる隙間もないほど差し迫った事態なのであります。
能聽忠臣之言
能(よ)く忠臣の言を聴かば、
ただ忠臣の諫(いまし)めの言葉をよく聞き入れるならば
百擧必脱必
百擧(ヒャッキョ)必ず脱せん。
何事においてもきっと禍を脱することができましょう。