【掌中(ショウチュウ)の珠(たま)】と読みまして、手の中の宝玉、すなわち最も大切にしているものという意味です。
杜甫が、左遷されて蓬州(ホウシュウ)にいる漢中王に奉った、七言絶句のなかに、
掌中(ショウチュウ)貪(むさぼ)り看(み)る一珠(イチジュ)の新(あら)たなるを
という形で、詠われています。
戯作寄上漢中王
戯れに作りて漢中王に寄せ上(たてまつ)る
雲裏不聞雙雁過
雲裏(ウンリ)聞(き)かず雙雁(ソウガン)の過(す)ぐるを
雲間に雁が飛ぶ声をさっぱり聞かないように、
掌中貪看一珠新
掌中(ショウチュウ)貪(むさぼ)り看(み)る一珠(イチジュ)の新(あら)たなるを
(この頃お手紙が来ませんね)授かったばかりの珠のような我が子に首ったけなのでしょう
秋風嫋嫋吹江漢
秋風(シュウフウ)嫋嫋(ジョウジョウ)として江漢(コウカン)を吹(ふ)く
秋風がそよそよと江漢に吹いています
只在他郷何處人
只(た)だ他郷(タキョウ)に在(あ)るは何處(いずこ)の人(ひと)ぞ
いつまでも異郷にいるのは何処の誰なのか、憐れな私です