【夏虫(カチュウ)は以(もっ)て冰(こおり)を語るべからず】と読みまして、夏の虫に氷のことを話してもむだなのは、その虫が暑い季節だけしか知らないからだ、ということから、見聞の狭い者は、広い世界を理解できない喩です。
出典は『荘子』秋水篇です。
井蛙不可以語於海者、拘於虛也。
井蛙(セイア)は以って海を語るべからずとは、虚(きょ)に拘(とら)わるればなり。
井戸の中にいる蛙に海のことを話してもむだなのは、その蛙がせまい自分のことしか
知らないからである。
夏蟲不可以語於冰者、篤於時也。
夏虫(カチュウ)は以て冰(こおり)を語るべからずとは、時に篤(あつ)ければなり。
夏の虫に氷のことを話してもむだなのは、その虫が暑い季節だけにしばられているからだ。
曲士不可以語於道者、束於教也。
曲士は以て道を語るべからずとは、教へに束(しば)らるればなり。
見識のせまい一芸だけの男に道のことを話しても通じないのは、その男が自分のうけた
教育に拘束されているからだ。