【壽(いのちなが)ければ則(すなわ)ち辱(はじ)多し】と読みまして、長生きすると辱ずかしめを受けることも多い、という意味です。
出典は『荘子』天地篇です。
堯(ギョウ)が華(カ)という土地に遊びに出かけた時、そこの封人(ホウジン:さきもり)が、
堯の長寿・富・男児出生を祈りましょうと申し出ました。
堯は、すべて断りました。
多男子則多懼、
男子多ければ則(すなは)ち懼(おそ)れ多く、
男の子をたくさん持つと心配事が多く、
富則多事、
富(と)めば則ち事多く、
金持ちになると面倒な出来事が多く、
壽則多辱。
壽ければ則ち辱多し。
長生きすると辱ずかしめを受けることも多い。
是三者,非所以養德也,故辭。
是(こ)の三者は、德を養う所以(ゆえん)に非(あら)ざるなり。故に辭すと。
この三つのことは、本来の徳を養うためのものではありません。だから、お断りしたのです。
兼好法師は、『徒然草、七』で同じようなことを言っています。
命長ければ辱多し、長くとも、四十にたらぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ。
長生きするとそれだけ恥も多い。長くても四十未満くらいで死ぬのが無難というものだ。