正義を重んじる人は、命をかけて名誉を守るということを表す四字熟語です。
【烈士 名に徇ず】と訓読みされます。
『史記』伯夷(ハクイ)列伝に出てくる四字熟語です。
列伝70巻の最初に伯夷列伝をもってきたのには、司馬遷の強い思い入れがありました。
正義を貫き、正論を吐いたがため 武帝を諫めた伯夷・叔齊(シュクセイ)の兄弟は飢え死にし、
司馬遷は、匈奴に敗れて降参した李陵(リリョウ)を庇(かば)って、武帝の逆鱗に触れ
宮刑(キュウケイ)に処される屈辱を受けました。
貪夫徇財 貪夫(たんぷ)は財を徇(もと)め
欲の深い者は、命がけで財産を求め
烈士徇名 烈士は名を徇め
正義を重んじる人は、命がけで名を求め
夸者死權 夸者(カシャ)は権(ケン)に死し
栄誉を好む人は、死ぬまで権力を追い
衆庶馮生。 衆庶(シュウショ)は生を馮(たの)む。
庶民は、(それらを求めるよりは)生きるのに精一杯。
聖人が現れてはじめて、義人、賢人が世に知られることになります。と司馬遷は言ってます。
伯夷叔齊雖賢 伯夷・叔齊は賢なりと雖(いへど)も
伯夷・叔齊は賢人ではあったが
得夫子而名益彰 夫子を得て名益(ますます)彰(あらは)る
孔子が称賛したので、名前が益々明らかになり
顔淵雖篤學 顔淵(ガンエン)は篤学(トクガク)なりと雖も
顔淵は篤学の士ではあったが
附驥尾而行益顯。 驥尾(キビ)に附(ふ)して行ひ益顯(あらは)る。
孔子の驥尾に付したから、その行ないが顕著になった。
烈は【歹+刂(刀)+灬】の会意文字です。 歹は毛髪のある頭骨の象形です。刀で首を斬るさまから、わけるの意味と、邪霊をはらうためにならべることから、つらねるの意味があります。その列を火(灬)で焼くことを表す字として烈が作られました。
「やく。はげしい。あきらか」の意味から『烈士』は、気性が強く節操を守る男子をあらわします。