【家(いえ)貧(まず)しくして親愛(シンアイ)散(サン)じ、身(み)病(や)みて交遊(コウユウ)罷(や)む】と読みまして、家が貧乏になると、親しい者たちも寄り付かなくなり、病気になると友達付き合いも終わりになる、という意味です。
出典は白居易の『冬夜』詩です。五言古詩で、【家貧しくして親愛散じ、身病みて交遊罷む】は、1句目と2句目です。
家貧親愛散 家貧しければ親愛(シンアイ)散じ
家が貧しくなると、愛する肉親も離散し、
身病交遊罷 身病めば交遊罷(や)む
我が身が病むと、世間との交遊も止む。
眼前無一人 眼前に一人(イチニン)無し
かくて眼前には一人の話し相手もいなくなり、
獨掩村齋臥 独(ひと)り村斎(ソンサイ)を掩(おほ)ひて臥(ガ)す
独り村の家に引き籠って臥している。
冷落燈火闇 冷落して燈火闇(くら)く
ひっそりとして灯し火はほの暗く、
離披簾幕破 離披(リヒ)して簾幕(レンバク)破(やぶ)る
簾やカーテンは破れ放題でひらひらしている。
策策窗戸前 策策(サクサク)たり窓戸(ソウコ)の前
サクサクと音がして窓の扉の前に、
又聞新雪下 又新雪の下(ふ)るを聞く
さらに新雪の降るのが聞こえてくる
長年漸省睡 長年(チョウネン)漸(ようや)く睡(ねむ)りを省(はぶ)き
年を取ってから次第に睡眠が短くなり、
夜半起端坐 夜半(ヤハン)起きて端坐(タンザ)す
夜半起き上がっては茫然と坐している
不學坐忘心 坐忘(ザボウ)の心を学ばずんば
無我の境地の心を学ばなければ、
寂莫安可過 寂莫(セキバク)安(いづ)くんぞ過ごす可(べ)けん
この寂しさをどうしてやり過ごすことができようか
兀然身寄世 兀然(ゴツゼン)として身 世に寄せ
思慮分別を忘れて我が身をこの仮の世に託し、
浩然心委化 浩然(コウゼン)として心 化(カ)に委(ゆだ)ぬ
ゆったりと心を自然の変化に委ねる。
如此來四年 此(か)くの如くして来(このかた)四年
このようにして四年、
一千三百夜 一千(イッセン)三百(サンビャク)夜(ヤ)
千三百もの夜を過してきた。