【面(まのあたり)之(これ)に命ずるに匪(あら)ず、言(ここ)に其の耳を提(テイ)せん。】と読みまして、目(ま)の当たりに教えるのではなく、耳を引き寄せて丁寧に教え諭すことを表しています。
出典は『詩経』大雅です。
古代中国の西周(B.C.1100頃~B.C.770)末期、『史記』周本紀によりますと、10代厲王(レイオウ)は臣下の諫言を聞かず利を貪り、民衆から反旗を翻(ひるがえ)され、彘(テイ:山西省)に出奔してしまいました。
衛の武公(B.C.812~B.C.758)が厲王を諫めた詩がありまして、その中の言葉です。
於乎小子
於乎(ああ)小子(厲王)
ああ、年若き人よ
未知藏否
未だ藏否(ゾウヒ)を知らず
事の善悪、御存じないか
匪手攜之
手もて之(これ)を攜(ひ)くのみに匪(あら)ず、
手を携えて導くだけでなく
言示之事
言(われ)之に事を示す。
例えを挙げて示したい
匪面命之
面(まのあたり)之(これ)に命ずるに匪(あら)ず
面と向かって、言い聞かせるだけでなく
言提其耳
言(ここ)に其の耳を提せん
その耳を引き寄せて、言い聞かせたい