【寸草:スンソウ】は、一寸ばかりの短い草のことですが、母の愛につつまれている子供を譬えています。
【春暉:シュンキ】は、春の温かな日差しのことですが、慈母の恩情をいいます。
子供がどんなに孝心をつくしても、母の恩にははるかに及ばないという譬えを表す四字熟語です。
出典から見ますと、残念ながら「父親」は登場してきません。
唐の貞元(テイゲン:785年~805年)十二年(796年)に46歳(異説はあります)で、科挙(カキョ:官吏登用試験)に合格した詩人猛郊(モウコウ)は、合格した4年後に地方の役人になり、故郷から母を迎えました。
その際、他郷に遊學する子が、母親の恩愛に感謝する形で、自分の気持ちを『遊子吟:ユウシギン』という詩で表現しました。
【寸草春暉】はその詩の中に出て来ます。
遊子吟 猛郊
慈母手中線 慈母 手中の線(いと) 母の手に在る縫い糸は
遊子身上衣 遊子 身上の衣 旅の息子の服のため
臨行密密縫 行に臨んで密密に縫い 一針、一針縫い上げる
意恐遅遅歸 意は恐る 遅遅として帰らんことを 早く帰れと思うのみ
誰言【寸草】心 誰か言う 【寸草の心】 親を思う子の心
報得三【春暉】 【三春の暉(ひかり)】に報い得んと 親の恩には報い得ず
アルジェ犠牲者のお一人の、お母さん、TVのインタビューに
『あなたたち 母親の気持ち 分かりますか ・ ・ ・ ・ 』。
棺に取りすがり、離れませんでした。