【青天(セイテン)の霹靂(ヘキレキ)】と読みまして、晴れ渡った青空に、突然に雷鳴が聞こえること、を言います。転じて、筆の勢いがきわめて良いたとえです。
出典は南宋の代表的詩人陸游(リクユウ)の 『四日夜鷄未だ鳴かざるに起きて作る』の詩です。
放翁病過秋、
放翁(ホウオウ)病みて秋を過ぎ、
放翁(陸游の号)、病に過ごす今秋、
忽起作醉墨。
忽(たちま)ち起きて酔墨(スイボク:酒に酔って書いた詩文)を作(な)す
ふと起きて、酔いに任せて筆をとる
正如久蟄龍、
正に久蟄(キュウチツ:久しくこもる)の竜の如く
筆勢まさに、隠れし龍のごとく
青天飛霹靂。
青天に霹靂を飛ばす
晴天に飛ぶ霹靂か
雖云墮怪奇、
怪奇(カイキ)に堕(ダ)すと云うと雖(いえど)も
書いた詩は、(奇妙なものだと思われるかもしれないが)怪しの詩(うた)と言うなかれ
要勝常憫默。
要は常の憫黙(ビンモク:沈み悲しむ)に勝(た)えたり
見過ごされてはなるものか
一朝此翁死、
一朝此の翁死すれば
ある朝放翁死するなら
千金求不得。
千金求むるも得ず
千金積むとも書くことできず。