【紳(シン)に書(ショ)す。】と読みまして、備忘のために紳に書き付けておくことを言います。
紳は、古代中国の高官の礼装用の大きな帯で、結んで前方に垂らしておくもの。その垂らした部分に、訓戒の語などを書きつけておくことを言います。
出典は『論語』衞靈公第十五です。
子張問行。
子張(シチョウ)、行(おこな)われんことを問(と)う。
子張が、どうすれば自分の思いが受け入れられるでしょうか、とたずねました。
子曰、言忠信、行篤敬、
子曰く、言(ゲン)、忠信(チュウシン)、行(コウ)、篤敬(トクケイ)なれば、
孔子が言いました、言葉は、誠実に真心を尽くして信義を守り、
行動は、実直で慎み深ければ、
雖蠻貊之邦行矣。
蠻貊(バンバク)の邦(くに)と雖(いえど)も行(おこな)われん。
異民族の国でも受け入れられる。
言不忠信、行不篤敬、
言、忠信ならず、行、篤敬ならざれば、
言葉が、誠実に真心を尽くして信義を守ることがなく、
行動が、実直で慎み深くなければ、
雖州里行乎哉。
州里(シュウリ)と雖(いえど)も行(おこな)われんや。
郷里でも受け入れられない。
立則見其参於前也、
立ちては則(すなわ)ち其の前に参(サン)するを見(み)、
立っているときは、(これらのことが)目の前にあらわれ、
在輿則見其倚於衡也、
輿(ヨ)に在(あ)りては則ち其の衡(コウ)に倚(よ)るを見るなり。
馬車に乗っていれば、その横木に(これらのことが)寄りかかっているのが見える。
夫然後行也。
夫(そ)れ然(しか)る後(のち)に行(おこな)われん。
そんなふうにしてはじめて、受け入れられるだろう。
子張書諸紳。
子張、諸(これ)を紳に書す。
子張はこの言葉を(身に着けていた)幅広の帯に書き付けて、修養の一大指針とした。