【民(たみ)の口を防(ふせ)ぐは、水を防ぐよりも甚(はなは)だし。】、と読みまして、人民の国政を非難する声を抑圧する害は、川の水をふさぎとめることから起こる害よりひどい、という意味です。
出典は『史記』周本紀です。
周の10代厲王(レイオウ:前877年~前841年)は、暴虐な政治を行い、贅沢に耽ったので、
周の人々は厲王を非難しました。
厲王は監視を厳しくして、自分の悪口を言うものを殺したので、周の人々は、非難しなくなりました。
三十四年,王益嚴。
三十四年、王、益々厳にす。
即位三十四年には、王はますます監視を厳しくした
國人莫敢言,道路以目。
国人敢て言う莫し。道路、目を以てす。
民は敢えて口に出して非難せず、道で人と出会っても、口を開かず、目を交し合って、
怒りの情を表した
厲王喜,告召公曰
厲王喜びて、召公に告げて曰く、
厲王は喜んで召公に告げた、
吾能弭謗矣,乃不敢言。
吾、能く謗りを弭(とど)めたり。乃ち敢て言わず。
わしは、非難を止めることが出来た。民は敢えて言おうとしない。
召公曰、是鄣之也。
召公曰く、是れ之を鄣(ふさ)ぐなり。
召公は言いました、いいえ口をおふさぎになったのです。
防民之口,甚於防水。
民の口を防ぐは、水を防ぐよりも甚だし。
民の口をふせぐのは、水をふせぐよりも危険です。
水壅而潰,傷人必多,民亦如之。
水、壅(ふさ)がりて潰(つ)ゆるとき、人を傷(そこな)うこと必ず多からん。民も亦た之の如し。
水が壅がれて決壊しますと、必ず多くの人を傷つけます。
民の口を塞(ふさ)ぐのもこのようなものです。