落とし穴に落ちた人に、上から石を落とすことから、人の弱みにつけ込んで、さらに害を加えることをいいます。「穽(セイ)に落ちて、石を下(くだ)す」と訓読みします。
韓愈(カンユ:A.D.768~A.D.824)が友人の柳宗元(リュウソウゲン:A.D.773~A.D.819)の死を悼んで「柳子厚(リュウシコウ)墓誌銘」を書きました。「落穽下石」はその碑文の中にでてきます。「子厚」は柳宗元の字(あざな)です。二人とも中唐の詩人でしかも「唐宋八大家」に数えられるほどの文筆家でもありました。文学的には当時形式を重んじていた四六駢儷体(シロクベンレイタイ)が盛んでありましたが、それに対して二人は古文復興運動を始めました。
さらに、政界の改革を目指して柳宗元は劉禹錫(リュウウシャク:A.D.772~A.D.842)とともに立ち上がります。しかし現代と同じように「既得権益」にしがみついている連中の猛反発に遭い、改革はわずか7ヶ月であえなく潰(つい)えてしまいます。柳宗元の政治生命は尽き、政治犯の汚名を着せられ、死罪こそ免れたものの、左遷につぐ左遷で中央復帰の夢はかなわぬまま、失意のうちに47歳で亡くなりました。
そんな柳宗元に韓愈が「墓誌銘」を書きました。 その内容の一部
「・・・・。陥穽(カンセイ)に落つるも、一たびも手を引いて救はず、反(かえ)って之(これ)を擠(お)して、又石を下す者、皆是(こ)れなり。・・・・・・」
「陥穽」はおとしあな。「穽」だけでもおとしあなの意味があります。
「擠(お)して」は、ただ押すだけではなく、押し落とすという意味が含まれています。
大震災に襲われた東北に、寒波・大雪がさらに襲いかかってきました。
仮設住宅にお住まいの方にもです。
これから「小寒」、「大寒」と続きます。
「陥穽」からは自分たちで這いあがらないといけないのでしょうか。
今年の漢字は確か「絆」のはず。