【大行(タイコウ)は細謹(サイキン)を顧(かえり)みず。】と読みまして、大きなことを行おうとするときは、小さなつつしみなど気にしなくていい、という意味です。
出典は、『史記』項羽本紀です。
そのなかでも特に人気の『鴻門の會』の一部分です。
漢の沛公(ハイコウ:後の漢の高祖劉邦(リュウホウ))が、宴会の途中で自分の命が
ねらわれているのを知りました。
沛公が廁に立ったとき、側近の武将樊噲(ハンカイ)が、そのまま逃げるように勧めたが、
沛公は項羽に別れの挨拶をしていないから、とためらいました。
樊噲曰、
樊噲曰く、
樊噲が言いました、
大行不顧細謹、
大行は細謹を顧みず、
大きなことを行うときに些細な謹(つつし)みなど顧みません。
大礼不辞小譲。
大礼(タイレイ)は小譲(ショウジョウ)を辞せず。
大きな礼節を行うには小さな謙譲など問題ではありません。
如今、人方為刀俎、我為魚肉。
如今(いま)、人は方(まさ)に刀俎(トウソ)たり、我は魚肉たり。
いま、相手は刀とまな板で、こちらは魚肉です。
何辞為。」
何ぞ辞するを為さん。
どうして別れの挨拶などする必要がありますか、と。
こうして沛公は馬を駆って逃げ、九死に一生を得ました。