敵を捕らえたり逃がしたりして、こちらの実力を見せつけて心服させることを表す四字熟語です。
【七擒七縦:シチショウシチキン】ともいいます。
【七縦:シチショウ】は、七回縦(はな)つことを言います。【縦】は「ショウ」が漢音読みで、
「ジュウ」と読むのは「従:ジュウ」に引きづられた慣用読みです。
【縦】は①たて、②はな・つ、③ゆる・す、④ゆる・める、⑤ほし・いまま、⑥たと・え 等の
意味があります。
【七擒:シチキン】は、七回擒(とら)えることを言います。【擒】は①とら・える、②とりこ の
意味があります。「扌+禽:キン」の会意文字です。禽(とり)を手で捕まえる、と言うことから
①とら・える、の意味になりました。
【七縦七擒】は225年の春から秋にかけて諸葛亮(孔明)が北方の魏を撃つため、背後を固めようとして南征し孟獲(モウカク)軍と戦った時のエピソードとして語られています。
『三国志・蜀書』 第五「諸葛亮(ショカツリョウ)伝」の本文ではなく、注書きで『漢晋(カンシン)春秋』に記載があるという書き方になっています。
その『漢晋春秋』の記載は下記の文章です。【七縦七擒】のところを抜書きしました。
亮(リョウ)笑いて縦(はな)ち、更に戦わしめ、七縦七擒するも、亮(リョウ)猶(な)お獲(カク)を
遣(や)らんとす。獲、止(とど)まりて去(さ)らず。
諸葛亮は笑って釈放しもう一度戦わせた。七度釈放し七度捕えたが、諸葛亮はなおも
孟獲を放してやろうとした。孟獲は止まって去ろうとしなかった。
「諸葛亮伝」の本文は
建康三(225)年春、諸葛亮は軍勢を率いて南征し、同年秋ことごとく平定した。
実に簡潔です。
【七縦七擒】は史実ではないと言われています。
夏目漱石の『坊っちゃん』の七章に「蟷螂(トウロウ)狩り」という、坊っちゃんの変わった運動の説明の中に【七擒七縦】の四字熟語が出て来ます。
・・・・・。この時蟷螂君は必ず羽根を広げたまま仆(たお)れる。その上をうんと前足で
抑(おさ)えて少しく休息する。それからまた放す。放しておいてまた抑える。【七擒七縦】孔明の
軍略で攻めつける。・・・・・・・。
警察庁が1985(昭和60)年12月に、翌年から語呂合わせで「1月10日」を『110番の日』としました。