【長蛇(チョウダ)を逸(イッ)す】と読みまして、長い蛇を取り逃がすという意味です。
大物、惜しい獲物、宿敵などを取り逃がすことを言います。
頼山陽が上杉謙信と武田信玄との川中島での合戦の場面を、謙信側の立場から歌った詩句です。
『不識庵(フシキアン)機山(キザン)を撃つの図に題す』、この詩は、永禄4年(1561)第4回の川中島の合戦で、敵陣に乗り込んだ謙信が太刀で信玄に斬りつけるが、信玄は軍配でそれを防ぎ、危うく難を逃れたという史実をふまえたものです。
題不識庵撃機山図 頼 山陽
鞭聲粛粛夜過河
鞭声(ベンセイ)粛粛(シュクシュク)夜河を過(わた)る
鞭おとたてずに 千曲川を渡る
暁見千兵擁大牙
暁に見る千兵の大牙(タイガ)を擁(ヨウ)するを
明け方に、大軍が迫ってくるのを見つけた。
遺恨十年磨一劍
遺恨(イコン)十年一剣を磨き
十年の間一ふりの剣を研ぎ磨き、
流星光底逸長蛇
流星(リュウセイ)光底(コウテイ)長蛇を逸す
うちおろす刀一閃の下、長蛇を逃す