【得難(えがた)きの貨(カ)を貴(たっと)ばず】と読みまして、めったに手に入らないような宝物などを無闇に貴ぶことをしない、という意味です。
出典は『老子』三章です。
人が生活していく上に絶対必要なものは、衣食住であるのに、世間の人々はそれには大した価値を
認めない。
反対に手に入れることの難しい珍奇な宝物などは贅沢品にしかすぎないのに、やたら尊び高い価値を
与える。
だから人々はそれを一つでも欲しいというようになり、盗み心を起こすようになる。
したがって「得難きの貨を貴ぶ」ことは、人々の徳行を妨げることになり、ひいては災いを招く原因とも
なるのである。
老子の意見です。
不尚賢、使民不爭。
賢(ケン)を尚(たっと)ばざれば、民をして争わざらしむ。
人の上に立つ人間が有能な人間を尊重しなければ、
人々が互いに競争する事もなくなるだろう。
不貴難得之貨、使民不爲盗。
得難(えがた)きの貨を貴(たっと)ばざれば、民をして盗(トウ)をなさざらしむ。
貴重な品々を有難がらなければ、盗みを働く者もいなくなるだろう。
不見可欲、使民心不亂。
欲(ほっ)す可(べき)を見(しめ)さざれば、民の心をして乱(みだ)れざらしむ。
欲望を刺激する様な情報を絶てば、人々の心は落ち着くだろう。