【群蟻(グンギ)、羶(セン)に附(つ)く】と読みまして、多くの蟻がなまぐさい羊の肉に集まることを言います。この意味が変化して、利益のあるところに人が群がり集まることのたとえとして使われる言葉となりました。
出典は『荘子』徐無鬼(ジョムキ)です。
巻婁者舜也、
巻婁(ケンル)なる者とは舜なり。
舜は、人を引き付ける者である。
羊肉不慕蟻、蟻慕羊肉、羊肉羶也。
羊肉、蟻を慕(した)はずして、蟻、羊肉を慕ふは、羊肉の羶(なまぐ)さければなり。
羊の肉は蟻を慕って集まることはないが、蟻は羊の肉を慕って集まって来る、
これは羊の肉が生臭いからである。
舜有羶行、百姓悦之。
舜に羶(なまぐ)さき行ない有りて、百姓(ヒャクセイ)これを悦ぶ。
舜に人を引き付けるところがあったから、人民が彼を喜び慕ったのである。
故三徙成都、至鄧之墟、而十有萬家。
故に三たび徙(うつ)りて都を成し、鄧の墟(キョ)に至りて、十有萬家あり。
それゆえに舜は三度も住居を移しながら、そのたびに人民が集まって都が出来、
鄧(トウ)という村里に行くと十余万もの家が立ち並んだそうだ。
儒家を激しく非難していた荘子の文章です。