【備(そな)わらんことを一人(イチニン)に求(もと)むる無(な)かれ。】と読みまして、
人にはそれぞれ長所短所があるのだから、一人に完全を求めてはいけない、という意味です。
出典は『論語』微子篇です。
周公謂魯公日、
周公(シュウコウ)、魯公(ロコウ)に謂(い)いて日わく、
周公旦が、息子の伯禽を初代魯公に封ずるに当って次のように訓戒した、
君子不施其親。
君子は其の親(シン)を施(す)てず。
人に君たる者は、自分の親族を見捨ててはならない。
不使大臣怨乎不以。
大臣をして以(もち)いられざるを怨(うら)ましめず。
大臣たちに自分のいうことを用いてくれないと怨ましめるようなことがあってはならない。
故舊無大故、則不棄也。
故旧(コキュウ)大故(タイコ)なければ則ち棄てず。
昔なじみの者は重大な過ちがない限り見捨ててはならない。
無求備於一人。
備(そな)わらんことを一人(イチニン)に求むる無かれ。
人の能力には長短がそれぞれあるから、一人の人に完全無欠を要求することなく、
その長所を生かすようにしなくてはならない。