【朝(あした)には青糸(セイシ)の如(ごと)くも暮(くれ)には雪となる】と読みまして、
朝には緑なす黒髪も、夕べには雪のように真っ白になってしまう、という意味で人生の移ろいやすく、
極めてはかないことを言ったものです。
李白が「将進酒」の中で歌った詩句です。楽府、古体詩で全体26句です。
4句目に【朝には青糸の如くも暮には雪となる】が登場します。
李白33歳の秋、友人に招かれて嵩山(1510メートル。河南省にある山で、中国五岳の1つ。少林寺で有名。北側を黄河が流れています。)に登り、友人の山荘で、酒盛りをした時の詩です。
君不見黃河之水天上來
君見ずや黄河の水天上より来たるを
君も知っていよう、黄河が天から流れ落ちてくるのを。
奔流到海不復回
奔流(ホンリュウ)海に到りて復(また)回(かえ)らず
奔流は海に注いで再び帰ることがない。
君不見高堂明鏡悲白髮
君見ずや高堂の明鏡白髪を悲しむを
君も知っていよう、豪邸に置かれた鏡があるじの白髪を映して悲しむのを。
朝如靑糸暮成雪
朝(あした)には青糸(セイシ)の如くも暮(くれ)には雪となる
朝にはみどりの黒髪が、夕ぐれには雪の白さに変わっている。
人生得意須盡歡
人生意を得ば須(すべか)らく歓(カン)を尽くすべく
人生、我が意を得た時は大いに楽しもうではないか。
莫使金尊空對月
金尊をして空(むな)しく月に対せしむる莫(なか)れ
金の酒つぼを使わずに月下に放置すべきではない。