雪の降る時、月の美しい時、花の咲き香る時、行楽を共にしたあなたのことを、最も懐かしく思い出されます。
中唐の詩人白居易(772~846)の「殷協律(インキョウリツ)に寄するの詩」の一句です。
四季の自然美を「雪月花」と総称するようになったのは、この詩句からだそうです。
五歳優游同過日
五歳の優游(ユウユウ)同(とも)に日を過ごし
五年の間、あなたと過ごした楽しい日々は、
一朝消散似浮雲
一朝消散して浮雲に似たり
或る朝、浮雲の如くに消散し
琴詩酒友皆抛我
琴詩酒(キンシシュ)の友(とも)皆我を抛(なげう)ち
琴を弾き、詩を詠み、酒を交わした友は、皆去った
雪月花時最憶君
雪月花(セツゲツカ)の時最も君を憶(おも)ふ
雪・月・花の時、最も懐かしく君を思い出す
幾度聴鶏歌白日
幾度(いくたび)か鶏(けい)を聴き白日を歌ひ
幾たび「黄鶏」の歌を聴き、「白日」の曲を歌ったろう。
亦曾騎馬詠紅裙
亦(ま)た曾(かつ)て馬に騎(の)り紅裙(コウクン)を詠ず
馬にまたがり、紅衣を着た美人を詠み
呉娘暮雨蕭蕭曲
呉娘(ゴジョウ)の暮雨(ボウ)蕭蕭(ショウショウ)の曲
呉娘の「暮雨蕭々」の曲は
自別江南更不聞
江南に別れて自(よ)り更に聞かず
江南に別れて後、聞くことなし