人の手を加えないで、あるがままに任せることを表す四字熟語です。
「老子」の思想を表す言葉でもあります。
『老子』全81章のなかに【無為】は随所に出て来ます。
3章では
無為をなさば、則(すなわ)ち治(おさ)まらざること無し。
(余計な事をしない)無為の政治を行えば、世の中が治まらない事は無い。
人の上に立つ人間が、人々の模範になる行いをすることによって、国はよく治まると書いてあります。
例えば
人の上に立つ人間が、珍しい財宝を尊重しなければ、人々は盗みをしないようになる。
人の上に立つ人間が、多くの欲望を持たなければ、人々の心は乱れなくなる、など。
その他にもいくつか例をあげています。
57章では
故(ゆえ)に聖人は云(い)う、我(わ)れ無為にして民(たみ)自(おのずか)ら化(か)す。
そこで聖人は言う、私が余計な事をしないから、人民はおのずとよく治まる。
余計なこととは、たとえば
騒ぎを起こしたり、
むやみに公共投資をして人民を駆り立てたり、
欲を出して蓄財に励んだり
と言うようなことだ、と老子はいってます。
『老子』のいう【無為】は
何もしないことではなく、ことさらなわざとらしいことをしないで、自然に振る舞うこと、
人間としての小賢しい知恵や、勝手な感情をすてて、自然界の自ずからな、有り方に従って行動することです。
【無為】というのも結構大変なことのようです。
【無為】を含んだ四字熟語を示します。
【無為渾沌:ムイコントン】 あるがままで、ぼんやりしていること。
【無為徒食:ムイトショク】 何もしないで、ただ無駄に毎日を過ごすこと。
【無為無策:ムイムサク】 何の対策もたてられず、腕をこまねいていること。
【無為無能:ムイムノウ】 なにもできないこと。
こちらは何にもしない【無為】のオンパレードです。