物事の善し悪し、を言った四字熟語です。
【是】は、正しいの意味です。字源的には、さじ(=スプーン)を表す象形文字です。
【是】が「これ」、「正しい」の意味に使われることになったので、さじ(=スプーン)には
「是」+「ヒ」の「匙」が作られました。
「ヒ」も「さじ」を表す象形文字です。
微妙な違いですが「匕」は「カ」と読みまして、人を横から見た字が逆さまになっていまして
「化」の最初の字です。
「ヒ」と「匕」の違いを甲骨文字から検証したのは『白川静』*さんです。
現行の漢和辞典はここのところが、充分に説明されていません。
【非】は、左右に細かい歯が並んだ形の「くし」を表す象形文字です。この字の音「ヒ」を借りて
「あらず」の意味に用いるのは「仮借:カシャ」という用法です。
【曲】は、竹や蔓(つる)などを細かくして編んで作った籠(かご)の形です。
竹や蔓などを曲げ、細かく編んで作るので、「まがる。まげる。こまごまとした。くわしい。」の
意味となりました。
【直】は、ひそかに調べて不正をただすという意味で作られた会意文字です。
「ただす。ただしい」の意味があります。
【是非曲直】の出典は『論衡:ロンコウ』説日篇です。
『論衡』は漢代の諸学説を合理的な批判精神と厳密な実証で批判した書です。
後漢の王充(オウジュウ:27年~101年?)の撰によるものです。
夫れ火光(カコウ)、人に近ければ則ち温なるも、人に遠ければ則ち寒なり。
いったい火光は身近だと暖かだが、離れれば寒い。
故に日中を以て近しと爲し、日の出入を遠しと爲すなり。
だから日中を近いとし、朝夕を遠いとするのだ。
二論各々見る所有り,故に是非曲直、未だ定まる所有らず。
この二つの議論はどちらも道理で、なかなか軍配があげられない。
類義語に【是非善悪:ゼヒゼンアク】、【理非曲直:リヒキョクチョク】があります。
『白川静』*さん
中国文学者。福井市生まれ。立命館大学教授。甲骨文字・金文の解読をはじめ、
漢字研究を進展させた。著「字統」「字訓」「字通」など。文化勲章。(1910~2006)
【広辞苑】より