【雨に沐(かみあら)い風に櫛(くしけず)る】と訓読されまして、
雨を頭から浴び、風に髮を吹きさらす、という意味で、風雨にさらされながら、苦しい努力をするたとえです。
出典は『荘子』「天下」篇です。
「天下」篇では、諸思想を列記して論評を加えています。その中で『墨子』を述べているところで、
【雨に沐い風に櫛る】の記載があります。墨子が古代の禹王を説明している文章の一部です。
禹親自操槖耜
禹は親しく自ら槖耜(タクシ)を操りて
禹は、自分で手ずから槖(もっこ)や耜(すき)を持って、
而九雜天下之川
天下の川を九雜し
世界中の川の流れを導きあつめ、
腓无胈、
腓(こむら)に胈(ハツ)なく
ふくらはぎの肉は痩せ落ち、
脛无毛、
脛(すね)に毛なく、
脛の毛は擦り切れ、
沐甚雨、櫛疾風、
甚雨(ジンウ)に沐し、疾雨に櫛りて
はげしい雨にうたれ、強い風に吹きさらされて、
置萬國
萬國を置けり。
多くの都を建設したのである。
禹大聖也
禹は大聖なり、
禹は大聖人であったのに、
而形勞天下也如此。
而(しか)も形の勞天下に労するや、此(か)くの如しと。
しかも世界のためにこれほどまでその身を苦しめたのだ。