【三年蜚(と)ばず鳴かず。】と読みまして、
実力のある者が、いずれ活躍する機会がやってくることを長い間じっと待っていることの喩えです。
出典は、『史記』楚世家。『十八史略』春秋戦国・楚 です。下記は、『十八史略』からです。
莊王卽位、三年不出令、日夜爲樂。
荘王位に即(つ)き、三年令を出さず。日夜楽しみを為(な)す。
荘王が位についたが、三年もの間、何の政令も出さず。日夜遊び楽しんでいた。
令國中、敢諫者死。
国中に令して、敢て諫(いさ)むる者は死せん、と。
国中に命令して、敢て意見する者は、死刑にする。
伍擧曰、有鳥在阜。三年不蜚不鳴。是何鳥也。
伍挙(ゴキョ)曰く、鳥有りて阜(おか)に在り。三年蜚(と)ばず鳴かず。是れ何の鳥ぞや、と。
伍挙が言いました、へんな鳥が丘の上にいて、三年も飛びもせず、鳴きもしません。
一体どうした鳥でしょう。
王曰、三年不蜚、蜚將衝天。三年不鳴、鳴將驚人。
王曰く、三年蜚ばず、蜚ばば将に天を衝かんとす。三年鳴かず、鳴かば将に人を驚かさんとす、と。
王が言いました、
三年も飛ばずにいるのは、飛んだら最後、天を突き上げるほど高く飛ぶためだ。
三年も鳴かずにいるのは、いったん鳴いたら、人をびっくりさせるためである。
蘇從亦入諫。王乃左執從手、右抽刀、以斷鐘鼓之懸。
蘇従(ソジュウ)も亦た入りて諫む。王乃ち左に従の手を執り、右に刀を抽(ぬ)いて、
以て鐘鼓(ショウコ)の懸(ケン)を断(た)つ。
蘇従という臣もまた王の前に入ってきて諫めた。
王はその忠誠に感じて、左の手で蘇従の手をにぎり、
右の手で刀をぬき、いままで遊びに使っていた鐘や太鼓のつりひもを断ち切った。
(さあ、これから政治に励むぞ、という決意を示し)
明日聽政、任伍擧・蘇從。
明日、政を聴き、伍挙・蘇従に任ず。
翌日から、さっそく政治をとり、伍挙と蘇従を重く任用した。
國人大悦。又得孫叔敖爲相、遂霸諸侯。
国人(コクジン)大いに悦ぶ。又、孫叔敖(ソンシュクゴウ)を得て相と為し、遂に諸侯に覇たり。
楚の国民は大いに悦んだ。又、荘王は孫叔敖という賢者を得て大臣とし、
ついに諸侯の覇者となった。