【鷦鷯(ショウリョウ:みそさざい)、深林に巣(す)くうも一枝(イッシ)に過ぎず】と、読みまして、
みそさざいは、深く大きな林の中に住んでいるが、その巢をかけている所は、一本の樹の一枝にすぎないという意味です。
また、人それぞれの分に応じて暮らすのが一番、と言うことを表わしてもいます。
出典は『荘子』逍遙遊篇です。
古代中国で聖天子の誉れ高い『堯:ギョウ』が許由という隠者に、天下を譲ろうとしたときの、許由の御断りの言葉の中にでてきます。
鷦鷯巣於深林不過一枝
鷦鷯は深林に巣くうも一枝に過ぎず、
鷦鷯は深い林の中に入って巣をつくっても、わずか一枝のことであるし、
偃鼠飲河不過滿腹。
偃鼠(エンソ・もぐら)は河に飲むも腹を満たすに過ぎず。
偃鼠は大きな川で水を飲んでも、その小さな腹を一杯にするだけだ。
歸休乎君、
帰休(キキュウ)せんかな君よ、
君よ、帰って休息するがよい。
予無所用天下為。
予(わ)れは天下を用(も)って為(な)す所なし。
私は天下を譲られたところで何もすることが無い。
庖人雖不治庖
庖人(ホウジン)、庖を治めずと雖も、
料理人が料理をうまくしないからといって、
尸祝不越樽俎而代之矣。
尸祝(シシュク)は樽俎(ソンソ)を越(うば)いてこれに代(か)わらず。
祭りの「かたしろ」や「かんぬし」がお供えの酒器や肉台を持って来て
その代わりをしたりしないものだ。