【豎子(ジュシ)ともに謀(はか)るに足(た)らず】と読みまして、
『こんな奴は、相手にしていられない!』という意味です。
『鴻門(コウモン)の会』で、項羽は劉邦暗殺の絶好の機会を逃してしまいました。
これを見て、老臣范増(ハンゾウ)は歯噛みして罵(ののし)った台詞です。出典は『史記』項羽本紀です。
沛公は鴻門を去り、すでにひそかに軍中に到着していた。
張良(チョウリョウ)は宴席に入って詫びを述べた、
沛公は酒に弱いので、お暇乞いの挨拶を致しかねました。
そこで、このわたくしめに鄭重に申しつけ、白璧一対を、再拝して大王様に献じ、
玉斗一対は、再拝して大将軍閣下に献上せよとのことでございます。
項羽は言いました、「沛公はどこにいるのか。」
張良は答えました、「大王にお咎めあるとのご意向を察し、ぬけでて一人で立ち去られました。
もはや部隊に到着されておりましょう」。
項王則受璧、置之坐上。
項王(コウオウ)則ち璧(ヘキ)を受け、之を坐上(ザジョウ)に置く。
項王は璧を受け取り、これを座席のかたわらに置いた。
亜父受玉斗、置之地、抜剣撞而破之曰、
亜父(アホ)玉斗(ギョクト)を受け、之を地に置き、剣を抜き撞(つ)きて之を破(やぶ)りて曰く、
亜父(=范増)は玉斗を受け取り、これを地面に置き、剣を抜き突き刺して
これを壊して言いました、
唉、豎子不足與謀。
唉(ああ)、豎子、ともに謀(はか)るに足らず。
ああ、青二才め、とてもいっしょに事がやれぬわ。
奪項王天下者、必沛公也。
項王の天下を奪ふ者は、必ず沛公ならん。
項王の天下を奪う者は、必ず沛公だ。
吾属今為之虜矣。」
吾が属、今に之が虜(とりこ)と為らん。
我が一族は、いまに奴めの捕虜になるだろう。