【有して施さざれば、窮して與(あた)へらるること無きなり】と読みまして、
財力が有るのに世に還元することがなければ、自分が困ったとき誰も助けてくれないだろう。
原文は【君子有三思】で【君子(クンシ)に三思(サンシ)有り】と訓読して、教養人には三つの思慮すべきことがある、という意味です。
【君子】と言いますのは、古代中国では「君主」またはそれに準ずる人を言ってました。
現代は、『教養人』を言います。小人は『知識人』です。
出典は『荀子』法行篇です。孔子が言ったこと、となってます。
孔子曰、
孔子 曰く、
孔子が言いました
君子有三思、而不可不思也。
君子に三思有り、而(しこう)して思はざる可(べ)からざるなり。
教養人には三つの配慮すべきことが有り、
しかもこれは十分配慮しなければならないことである。
少而不学、長無能也。
少(わか)くして學ばざれば、長じて能無きなり。
若い時に学問しなければ、年を取ってから、能無しと言われかねない。
老而不教、死无思也。
老いて敎へざれば、死して思はるること無きなり。
年をとってから、人を教えることがなければ、死後に思い慕われることはない。
有而不施、窮無與也。
有して施さざれば、窮して與(あた)へらるること無きなり。
財力が有るのに世に還元することがなければ、自分が困ったとき誰も助けてくれない。
是故君子、少思長則學、
是(こ)の故(ゆえ)に君子は、少(わか)くして長(ちょう)を思へば則(すなは)ち學び、
こういうわけで教養人は、
① 若い時には将来のことを考えて、大いに学問をし、
老思死則教、有思窮則施也。
老いて死を思へば則ち敎え、有して窮を思へば則ち施すなり、と。
② 年を取ってからは死後のことを思って人を教え、
③ 財力に余裕があったときには、自分が困ったときのことを考えて、社会還元をすべきである。