隣の老人を疑う。同じことを言っても身内の言うことは善意にとるが、他人の言うことは悪意にとることがあるということです。
出典は『韓非子』説難篇です。
宋有富人。
宋に富人(フジン)有り。
宋の国に金持ちがいました。
天雨牆壊。
天雨ふり牆(かき)壊(こわ)る。
雨が降って土塀がくずれたとき、
其子曰、「不築、必将有盗。」
其の子(こ)曰く、「築かずんば必ず将(まさ)に盗(トウ)有らんとす。」
その家の子供が、塀を直さないと、きっと泥棒に入られるよ、と言いました。
其隣人之父亦云。
其の隣人の父も亦た云ふ。
その隣の家の老人もまた同じことを言いました。
暮而果大亡其財。
暮れて果たして大いに其の財を亡(うしな)ふ。
夜になってから果たして沢山の財宝が奪われたが、
其家甚智其子、而疑隣人之父。
其の家甚(はなは)だ其の子を智とし、隣人の父を疑へり。
その家では、そこの子供をたいへんな知恵ものだと考えて、隣の老人を怪しいと疑った。