【堂に升(のぼ)り、室に入る】と訓読みされまして、学問や技芸の水準が高くなっていくことの喩えです。
あるとき、子路が孔子から「お前の腕前は今一だな」と云われました。それを聞いた他の弟子たちは、子路を軽く見るようになりました。
孔子も「こりゃいかん!」と思ったのでしょう、
「今一だな」と言うのは、深奥の最高レベルに至るのは、今一だなと言ったのだ。勘違いするな。と弟子たちを窘(たしな)めました。
子曰、由之瑟、奚爲於丘之門。
子日く、由(ユウ)の瑟(シツ)、奚(なん)ぞ丘(キュウ)の門に於いて爲(す)ると。
孔子が、子路の奏でる音楽は、とかく殺伐な気もあって、
私の家で奏でるようなものではないな、と批評しました。
門人不敬子路。
門人、子路を敬せず。
これを聞いて他の弟子達が、子路を軽んじ始めたので、孔子は窘(たしな)めて言いました
子曰、由也升堂矣。
子日く、由や堂に升(のぼ)れり。
孔子は弟子達に向かって、
子路はたとえて言えば、表座敷まで上り得たが、まだその奥の部屋に入り得ていない
というだけで、決して侮(あなど)ってはいけないぞ。
未入於室也。
未(いま)だ室(シツ)に入(い)らざるなり。
お前らはまだ表座敷まですら進みえていないのだ、と。