錐を引き出して股に突き刺す、と言うことですが、書物を読んで一生懸命勉強していて、つい眠気を催してきたとき錐で股をさし、眠気を覚ましていた、という話です。出典は『戰國策』秦策です。
戦国時代の遊説家蘇秦(ソシン)は、秦の恵文王(ケイブンオウ)に何度も献策しましたが採用されることなく故郷に戻ってきました。
妻を始め親戚皆、冷たく彼を迎えるのみでした。
そこで蘇秦は、一大奮起して兵法の書物を中心に、君主の心に適う方策の研究に没頭しました。
書物を読んで眠気を催すと、錐を取り出して自分の太腿に突き刺し、睡魔を払いのけました。
あるときはその血が流れて踵まで達するほどでした。
という故事に基づいたお話です。
乃夜發書陳篋数十、
乃ち夜 書を發(ひら)き、篋(キョウ)を陳ぬること数十、
そこで、夜中に書物を取り出し、本箱を数十ほど並べて
得太公陰符之謀、伏而之誦、
太公陰符(太公望の兵書)の謀を得、伏して之を誦し、
太公望の『陰符』を見つけ、熟読し、暗誦し、
簡練以為揣摩。
簡練(選択熟練)して、以て揣摩(シマ)を為す。
その要点を抜き書きし、君主の心理を推測する研究に没頭しました。
讀書欲睡、引錐自刺其股、
書を読みて睡らんと欲せば、錐を引き自ら其の股に刺し、
書物を読んで眠気を催すと、錐を引き寄せて股に刺し、
血流至足。
血流れて足に至る。
ために血は流れて足にまで達した。