【甘井(カンセイ)先(ま)ず竭(つ)く】と読みます。
美味しい水のでる井戸は人が競って汲(く)むので、他の井戸よりも先に汲みつくされてしまうと言う意味です。このことから才能のある者は、その才能ゆえに早く衰退してしまうという譬えを表した言葉です。
出典は『荘子』山木篇です。
孔子が諸国を歴訪していた時、陳と蔡とのあたりで軍隊に囲まれ、七日の間煮炊きもできず何も食べられなかったことがありました。死にそうな目に遭いました。
大公任(タイコウニン)と言う人が、孔子のところへ慰問に行って言いました。
『そんな死ぬ目にあうなんて大変でしたね。私が死なないですむ方法を教えてあげます』と
言って語り出したのが次のような例え話です。
直木先伐、甘井先竭。
直木(チョクボク)は先(ま)ず伐(き)られ、甘井(カンセイ)は先ず竭(つ)く。
真っ直ぐに伸びた木はまず伐採され、うまい水のでる井戸はまず汲みつくされる。
子其意者飾知以驚愚、
子(シ)は其れ意(おも)うに、知を飾りて以て愚を驚かし、
あなたは、考えてみるのに、知識を飾り立てて愚か者をびっくりさせ、
修身以明汚、
身を修めて以て汚(オ)を明らかにし、
自分の身を修めて他人の欠点をはっきりさせ、
昭昭乎如掲日月而行、
昭昭乎(ショウショウコ)として日月を掲(かか)げて行くが如し。
すみずみまであきらかにし、まるで太陽と月をかざして歩いているようなものだ。
故不免也。
故に免(まぬが)れざるなり。
だから災難を免れないんだよ。