お酒を十分に頂いたので、これ以上は酒のお相手は出来ません、という意味です。
漢の元年(B.C.206年) 劉邦と項羽の「鴻門の会」での一場面です。
勝ち目のない劉邦は張良と項伯の策に従って、鴻門の会見を行って項羽の怒りを解くことにした。
項羽の怒りは解けましたが、范増(項羽の臣)が項羽の天下取りの妨げになる劉邦を暗殺しようとしていた。
これを察知した張良は、この危機の場から劉邦を逃した後、項羽に陳謝釈明した時に用いたのが
この言葉【桮杓に勝へず】です。
沛公已去、間至軍中。
沛公(劉邦)已に去り、間(ひそ)かに軍中に至る。
沛公はこうして去り、しばらくして軍中に到着した。
張良入謝曰、
張良入り、謝して曰く、
張良は(宴席に)入って謝罪して次のように言った。
沛公不勝桮杓、不能辭。
沛公、桮杓に勝へずして、辞する能わず。
沛公は酒の飲み過ぎに耐えず、御挨拶もできない状態でしたので、
謹使臣良奉白璧一雙、
謹みて臣良に白璧一双を奉じ、
謹みての良に命じて一対の白璧を奉り、
再拝獻大王足下、
再拝して大王の足下に献じ、
再拝して大王(項王)の足下に献上させ、
玉斗一雙、再拝奉大將軍足下。
玉斗一双は、再拝して大将軍の足下に奉ぜしむ。
玉斗一対を再拝して大将軍の足下に捧げよとのことでございます。