【魚(うお)を得(え)て筌(セン)を忘る】と訓読みされます。
魚を捕ってしまうと、使っていた道具の事は忘れてしまうことを言ってます。
このことから、目的を達成すると、いままで役に立っていたものを忘れてしまうという譬えを表す四字熟語です。
【筌】は、『やな』と言って竹で編んだ漁具のこと.
籠の形をし、水中に沈めておいて魚をとるために使います。
【得魚忘筌】は『荘子』・外物篇に出ています。
筌(セン)は魚に在る所以(ゆえん)、
『やな』は魚を獲えるためのものであるが、
魚を得て筌を忘る。
魚が獲れたら『やな』の事は忘れて仕舞う。
蹄(テイ)は兎に在る所以、
『わな』は兎を獲るためのものだが、
兎を得て蹄を忘る。
兎が捕まったら『わな』のことは忘れてしまう。
言は意に在る所以、
言葉は人の思考を相手に通じさせるためのものだが、
意を得て言を忘る。
思考するところが伝われば言葉は忘れてしまうものである。
吾、安(いずく)にか夫(か)の忘言(ボウゲン)の人を得て、之(これ)と与(とも)に言わんや。
私はどうにかしてこのように、言葉を忘れ去った人と共に語り合いたいものである。
類義の四字熟語としまして次のようなのがあります。
【鳥尽弓蔵:チョウジンキュウゾウ】。
一般に「鳥(とり)尽(つ)き弓蔵(おさ)めらる」と訓読みされます。
鳥を射尽くしてしまうと、不必要となった弓がしまわれてしまうという意味です。
『史記』・越(エツ)世家(セイカ)。
【兎死狗烹:トシクホウ 】。
一般に「兎(うさぎ)死して狗(いぬ)烹(に)らる」と訓読みされます。
兎が死んでしまえば、それを捕らえるのに用いられた猟犬は不必要となって、煮て食べられてしまう意。
『韓非子』内儲(ナイチョ)説。
【忘恩負義:ボウオンフギ】。
一般に「恩を忘れて義に背(そむ)く」と訓読みされます。
恩義を忘れて義理に背くことを表しています。