矢が石に命中して矢じりが石に突き刺さることを言ったのですが、そんなことはあり得ません。
でも、必死の気持ちで事に当たればどんなことでも成就できるたとえを言ったものです。
前漢の将軍:李廣(リコウ)に関した故事です。出典は『史記』李将軍列傳第四十九です。
廣居右北平。
広、右北平(ユウホクヘイ)に居(お)る。
李廣が、右北平にいると
匈奴聞之、號曰漢之飛將軍、
匈奴之を聞き、号して漢の飛将軍と曰い、
匈奴はこれを聞いて、漢の飛将軍、と呼び
避之數歳、不敢入右北平。
之を避(さ)くること数歳(スウサイ)、敢えて右北平に入らず。
数年の間、彼を避けて、右北平に侵入することはなかった。
廣出獵、見草中石、以爲虎而射之。
広出でて猟(かり)し、草中の石を見、以て虎と為して之を射。
あるとき李廣が狩りに出かけました、草原にあった石を虎と見違え、弓で射た。
中石沒鏃。
石に中りて鏃(やじり)を没す。
命中して鏃が石の中に没入していた。
視之石也。
之を視れば石なり。
よく見ると石であった。
因復更射之、終不能復入石矣。
因りて復た更に之を射るも、終に復た石に入ること能わず。
また射てみたが、何度射てもついに射込むことができなかった。