主義や利害を同じくする者同士が、仲間をつくって結託して、仲間以外を排斥することを表す四字熟語です。
【朋】は、なかま、【党】は、一堂に集まった仲間たち。
【朋党】は、利害を同じくする者が集まり、他の者たちを排斥するという意味になります。
【比】は、私心をもって、かたより親しむこと、【周】は、公平な交際を意味します。
【比周】という、熟語になりますと、かたよって一方に仲間入りすることの意味にもなります。
【朋党比周】は『韓非子』孤憤(コフン)篇に二度もでてくる四字熟語です。
「孤憤」と言いますのは、孤(ひと)りの憤(いきどお)り、と読みまして韓非子自身の憤りを記述した篇と言われています。
秦の始皇帝が、この「孤憤」と「五蠹:ゴト」を愛読してその思想に心酔し、この著者に会えたならば死んでもよいとまで思ったことが『史記』に書かれています。
朋党比周以蔽主、 朋党比周してもって主を蔽(おお)い、
徒党を組んだ、なれあいで主君の判断をくもらせ
言曲以便私者、 曲を言いてもって私に便する者は、
法に外れたことを進言して仲間の便宜をはかる者は、
必信於重人矣。 必ず重人(重臣)に信ぜらる。
必ず重臣に信用されるものである。
もう一か所は
大臣挟愚汚之人、 大臣は愚汚(ぐお)の人を挟(さしはさ)み、
大臣は、愚か者や悪人たちを従えて
上与之欺主、 上はこれとともに主を欺き、
彼らと一緒に上の者は主君をあざむき、
下与之収利侵漁、 下はこれとともに利を収(おさ)めて侵漁し、
下の者は私腹を肥やして利益をむさぼり
朋党比周相与、 朋党比周してあいともにし、
党派をくんでぐるになり
一口惑主、 口を一つにして主を惑わし、
口裏を合わせて君主を惑わせ
敗法以乱士民、 法を敗(やぶ)りてもって士民を乱し、
法を無視して世の中を混乱させ、
使国家危削、 国家をして危削(きさく)す。
ついには国家が危うくなる。
主権在民のいま、韓非子の言う「君主」を国民に、大臣や【朋党比周】する者を、政府・官僚(公僕)に読み変えると、なんとなく理解できると思いませんか。