一方の言い分だけを聞いて判断すると、災いが生まれるということを表した言葉です。
【偏聴(正字體は聽)】は、どちらか一方の言い分だけを聞いて判断してしまう、という意味です。
【姦を生ず】は、道理に外れた善くないことが起きると言う意味です。
『史記』鄒陽(スウヨウ)列伝を出典にしている言葉です。
齊の國の弁舌の人:鄒陽は、友人の中傷で投獄されてしまいました。命がけの上申書を梁の孝王に差し出しました。
歴史的な人物をつぎつぎにあげて孝王の心を動かし、鄒陽は釈放された上で、上客として遇されました。
偏聽生姦、獨任成乱亂。
偏聴は姦を生じ、独任は乱を成す。
『一方だけを聴けば善くないことになり、独善でやれば乱をおこすものです。』
昔者魯聽季孫之説
昔者、魯 季孫の説を聽きて
むかし、魯は季孫氏の説を聞き入れて
而逐孔子
孔子を逐ひ、
孔子を放逐し、
宋信子罕之計
宋 子罕(シカン)の計を信じて
宋は子罕の計を信じて
而囚墨翟
墨翟(ボクテキ)を囚(とら)ふ。
墨翟(ボクテキ)を囚へました。
夫以孔墨之辯
夫(そ)れ孔・墨の弁を以てすら、
孔子・墨翟ほどの弁舌の士であっても、
不能自免於讒諛
自(みずか)ら讒諛(ザンユ)を免(まぬが)るること能はずして、
讒言や阿諛(へつらい)から免れることはできず、
而二國以危。
二國 以て危ふし、と。
魯・宋の二国は危うかったのです。