黒く染めても、黒く染まらない、ということから、本当に心が潔白で、意志が堅固な人は、どのような環境に置かれようとも、その影響を受けて汚れてしまうことはない。
出典は『論語』陽貨篇です。
春秋時代、晋の国の実力者である 仏肸(ヒッキツ)が、中牟(チュウボウ)という町で
反乱を起こし、孔子を招聘しました。
孔子はすっかり行く気になっていましたが、子路がこれに反対しました。
かって私が先生から教わったのは
『よからぬことを働いている者のところへは、君子は足を踏み入れない』と言うことでした。
いま、仏肸は中牟を略奪して謀叛を起こした人間です。どうしてそんな者のところへ行くんですか。
それに対する孔子の対応です。
不日堅乎、磨而不磷。
堅しと日わずや、磨(マ)すれども磷(うすろ)がず。
極めて堅いものは、どんなに磨いても薄くはならない。
不日白乎、涅而不緇。
白しと日わずや、涅(デッ)すれども緇(くろ)まず。
極めて白いものは、どんなに染めても黒くはならない。
すなわち、志の堅固な者は、周囲の影響によって汚されることはない。
だから安心しなさい。
吾豈匏瓜也哉。
吾(われ)豈(あに)匏瓜(ホウカ)ならんや。
それに私は苦瓜(ニガウリ)ではない。
焉能繋而不食。
焉(いずく)んぞ能く繋(かか)りて食(くら)われざらんや。
人に食べられないまま一生を終えるなんてゴメンだ。
結局、仏肸のところには行きませんでした。