戦国武将である北条氏綱(ほうじょううじつな:1487 ~ 1541)が、息子・氏康(うじやす)に
『五箇条の訓戒』を遺しました。
その中の第五条に【勝って兜の緒を締めよ】の記載があります。
手際なる合戦にて夥敷(おびただしき)勝利を得て後、驕(おごり)の心出来し。
合戦で勝利が続いた後は、驕りの心が生まれる。
敵を侮り、或は不行義(フギョウギ)なる事、必(かならず)ある事也。可慎(つつしむべし)。
敵を侮ったり、思い上がったりすることは、必ずあることだ。
これは慎まなければならない。
散々(サンザン)如斯(かくのごとくに)候而(そうらひて)、滅亡の家、古より多し。
このように慎まずにして、 亡びた家は昔から多い。
此心、万事にわたるそ。
この精神は万事に言えることだ。
勝て甲(かぶと)の緒をしめよ、といふ事忘れ給ふへからす。
【勝って兜の緒を締めよ】、ということを忘れてはいけない。
『史記』 項羽本紀に 【勝って兜の緒を締めよ】と同義の戒めの言葉があります。
戦勝将驕卒惰者敗
戦い勝ちて将(ショウ)驕(おご)り卒(ソツ)惰(おこた)る者は敗(やぶ)る。
戦に勝って将が驕り、卒が怠けてくる軍は敗れる。